海外、特に発展途上国に行くと、
自分の価値観が揺さぶられることが多くあります
その中でも私がはじめに行った国
スリランカで会ったあるおっちゃんは
9ヶ月後の今でも強烈な印象があります
歯抜けのおっちゃんと会ったキャンディ
そのおっちゃんと会ったのは、
スリランカの観光名所のキャンディという町
そう、キャンディ茶葉の故郷です

ホステルで頂いたお紅茶とジンジャークッキー
仏陀の歯が保存されている寺院、佛歯寺があり、
スリランカの大きな観光名所の一つです
日本語を教えるはずだったホストからの連絡が
突然途絶えてしまい、
新しく見つけたボランティアホストのところに行くまで
時間があったので、首都コロンボを離れて
ぷらっとキャンディを訪れました
私は特にコレといった予定もなく、
せっかく来たのだから寺院に寄ってみてみようかと思い
ゆっくりと寺院の周りの湖を歩いていました

キャンディの駅やバス停から5分ほど歩くとひろーい湖があります。この湖のほとりに佛歯寺があります
現地の人からすれば、観光客、
しかも若い女性という事で、
かもの対象には持って来いだったようです
もう、顔面パンチを差し上げたいくらい、
簡易タクシーの運転手※や
お土産やさんや、出店の人から声をかけられました
(※↓こんな感じの3輪簡易移動手段、
トゥクトゥクと呼ばれるやつ)や、


中から見た感じ。誇りや排気ガスをもろにかぶります。でも臨場感たっぷり。
やれやれ、
彼らも大変な生活をしているのは
分かっていますが、
ひとり一人相手にしていたら
私の全財産はなくなってしまう・・
と思いながら寺院に向かっていると、
ある、ちょっと、ちゃんとした(?)
お土産屋さんが目に入りました。
政府がやっているらしきお土産屋さんで、
キャンディの歴史や、工芸品の制作現場の紹介を
パネル展示したりしてました。
そこに入ろうとしたら、
後ろから声をかけてきたおっちゃんがいました。
年齢は60歳くらい。
歯がもう半分以上なく、
小柄で細い方でした。その方は
「この店は高いから、湖の反対側の店に行ったほうが良いよ」

と指差し、他のお土産屋さんを教えてくれました。
ああ、物売りだけではない、親切な人もいるもんだ。
「ここは公的な機関がやってるとこなんですかー?」
「そう、ここは政府がやっているんだ。
でもものを買うならあっちのほうが良いよ」
とかなんとか、当たり障りもない話をしていました
「地元の方ですか?」と聞いた所、
「いや、私はこういうもんだ」
サラッと一瞬、
おっちゃんが写真入のIDを見せてくれました
そして、観光局のようなところの職員だというのです
へぇーそんな人もいるんだ
と思いながら
私は寺院のほうに向かっていきます
おっちゃんはついてきます
「おねえちゃん、これからどこ行くんだい?」
「歯が納められている、寺院に行こうと思います」
というと
おっちゃんが、
「そうなんだ、じゃあ一緒にいってあげようか」
と言うのです
おっちゃんの英語はものすごい訛りがあるし、
聴き取るのもやっとでしたが、
悪い人ではなさそうだし、
地元の人との交流って旅のテーマの一つだったし
一緒に寺院に行くことにしました
寺院でいろいろ仏教のことなどを
話してはくれるんですが、
何せ訛りがひどいし、
聞きたい事を聞いても答えてくれないし
「まぁ、付き合ってもらっているし・・・
しょうがないか・・・」
と思いながら話を半分にしか理解できなかったけれど
30分くらいご一緒しました
おっちゃんの写真も撮ろうとしたのですが、
激しく拒否されました。
あ、やっぱり神聖な場所で
人の写真を撮るって駄目なの?
って軽く思っていました

佛寺院の中の様子
途中で寺院の管理人みたいな人も
おっちゃんを知っている様子で、
「あ、この人本当に観光局のひと?なのか?」
と思う場面も多々ありました

そのおっちゃんが撮ってくれた写真。スイレンやジャスミンの花でお供えをする。おっちゃん、花は香りが良くても匂いをかいだりしてはいけない、神様のものだからと言っていました
そして、寺院をぐるっと回り見終わったところで、
じゃあ、ありがとうございました・・・
で終わると思っていました
そう、お礼を言おうとしたときです
「じゃあ、付き合ってあげたから、
貴女から善意でも是非
500スリランカルピー(400円くらい)頂きたい」
・・・
えっ!?タダじゃないの!?
っていうかそんな、
お金払うとか、合意していなかったじゃん!!
チップってヤツ!?
・・・と言おうとおっちゃんを見ました
でもそこには、
ものすごい目力のあるおっちゃんの鋭い目がありました
あんた、払うよな、
払わない理由はないよな
と言う感じです
そこで、私の頭の中で数秒
いろんな考えが浮かんできました
頼んでいないのに自分から話しを始めたんだから
お金を後から要求するのはせこい、という考えと
こういうせこい手口で400円稼ごうとするのは、
あとあと
おっちゃんの為にもならないかもしれないから
払わない方がいいという考えと
上記のような日本の目線から見て、
物事を判断している自分が嫌で、
何が正解か分からないから、
ちょっと待てという考えと
おっちゃんは生活にも苦労があるだろうし、
でもそれは他のみんなも同じだし、
よく分からないけど
その場から逃げたいが為に、
たかが400円だから払ってしまえ
という考えとが
ぜーんぶ頭の中をぐるぐる駆け巡っていました
お金を後々から要求するなんて
ありえない!だまされた!
そんな人にお金払うの!?
嫌だ!
と言う憤りと共に。
でも、おっちゃんにとっては、
そんな取引前の合意ありきなんていう
前提は知ったこっちゃない。
そんなものは日常の生活上にはないのだから。
そんな目でおっちゃんが私を見てきます。
その目を見て、私は憤りを覚えたと同時に、
納得はいかないまでも、
「良い観光客」になりたいという
偽善者の顔も出てきました
そして、結局、この息苦しい空気から抜け出したくて
500ルピーおっちゃんに渡しました
おっちゃんは当然のごとく受け取り、
「また何かあったら、
この寺院の周りにいるからおいで」
と一言の残し、去っていきました
その後、私はもんもんとしました。
私にとってはたかが400円だけど、
本意から払ったお金ではなかったからです
こういう合意なしで
お金がとれるって思われちゃうと、
きっとおっちゃんはこういう手口を繰り返す・・・
そうするとスリランカに来た観光客にとって
この国の悪いイメージがついてしまう・・
やっぱり渡さなかったほうが良かったんではないか。。。
いや、おっちゃんが善意でやってくれたことだし・・・
そして、
そのもやもやが消えず、
翌日おっちゃんに会いに行きました
やっぱり、
お互いが合意しない上で解説しだすのは、ずるいよ!
払わなかったら罪悪感があるだけじゃん!
と言いたくて
おっちゃんと会った場所にもう一度行きました。
会えるあてはなかったけど、
もう一度会ってちゃんと、自分の考えを言いたくて
そしたら、おっちゃんがいました!
おっちゃんは明るい声で、
「やー!まだキャンディにいたんだね!
いつまでいるんだい?」
・・・とまぁ陽気に話しかけてくるのです
そこで、私は昨日お金を要求されたことに
腹を立てたことを伝えようと口を開きました
お金が絡むなんて一言も言わなかったじゃん
はじめから知ってたら、
話は聞かない・・・と言おうとしたら
言葉をさえぎられ、
Everyone has to work.We need to make money.
皆、誰一人例外なく、暮らしていくためには
何かしらで稼がないといけないんだ
I did what is good for you, and you did follow me and walk with me.
私はあなたにとって役に立つことをした
あなたも私の話を聞くという行動をしたじゃないか
What is the goal in your life?
Why you have been hanging around here?
You didn’t even have anything planned yesterday.
What are you going to do in your life?
Do something good for others and for your life.
Don’t just float around doing nothing.
あなたは昨日、何も予定すらなかったじゃないか?
あなたも人生を通して人のために何かをするべきだ。
見つからないなら必死に何か一つでも
人のためになることをやるのだ
「うっ」
言い返されて、確かにそうだ。
私は何の予定もなく、
ただ、ふらふら時間を過ごしていただけだ
(あとで思ってみれば、フラフラしていたのと
お金を要求するしないは関係がなかったのですが
おっちゃんに言われてズキッときたのはここでした)
そんなことをしているな。
なにか人のために行動しろ
そして稼ぎ、暮らしを立てるんだ。
おっちゃんの強烈なメッセージに
返り討ちをくらいました。
正直、何も言えずに悔しかった・・・
考えてみると、おっちゃんは
お金を稼ぐ為にはしつこい物売りにでも、
ぼったくりな土産屋にでも、
物乞いにでもなれた

でもおっちゃんは英語が出来たから、
多分、聞いたり覚えたりしたことを
必死で昨日、話してくれたんだ
おっちゃんなりに
どう自分の力で稼ぐか考えてきっと
観光客に喜ばれて
自分の稼ぎもとれる
この行動に出たのだ
物乞いにもなれたはずだ
地元の人とグルになって、
丸腰の私からお金を盗むこともできたはずだ
でもそうではなく、
おっちゃんは人のためになるように、
多分を歴史を学び、英語を練習した

これまでお金が払われない経験もしただろうけど
そういう時は、きっと
次はどうすればいいのか考えて
うそか本当か分からないけど、
顧客の心理を安心させる為に写真入IDをさっと見せ
写真を撮られることはオンライン上でバレるから
拒否していた・・・(多分)
そして最後にお金を要求して賭けるという
パターンに行き着いたのだ・・・
そう思うと、わたしは自分がいかに
自分の物差しでおっちゃんにモノを言っていたか
じわじわと痛感しました
そして、
おっちゃんのためにならないとか、
観光客に悪いイメージがつく・・・とか、
「自分」の不満を直接言うのではなく
自分の物差しで物事を都合よく計って
おっちゃんの将来が
よりよくなるように思うふりをして、
自分が受け入れられない行動をとられた不満を、
憤慨の理由を
正当化するために
もんもん考えていたのだと思いました
本当はおっちゃんの将来なんて考えてない
スリランカの人が観光客からどう思われようと、
本当はこれっぽっちも気にしていない
そんなスリランカ代表みたいなこと言って
一時的な偽善を語って自分が気持ちよくなりたいだけで
そんなのおこがましいと思いました
ただ私が
自分がだまされたと感じて
それに反応して怒りが出てきて
その怒りの出所に自尊心のなさがあって
人の役に立つことができていない自分に
どうにも出来ない恥と葛藤を感じていたのです
でもそれを誰かに感じて欲しくなくて
直感的に出てきた怒りと
頭の中でいかにも筋が通ったようなオハナシを
おっちゃんに聞いて欲しくて
この怒りと
自分が何も行動できていないと思っているもどかしさを
どうしようもない不満を
だれかにぶつけようとしたんです
でもそれはおっゃんにはお見通しだったのです
不満を持つくらいなら
そのエネルギーをどんな形であれ、
人のために使うこと
ふらふらしているな
自分の時間とエネルギーを賭けて、
どんな形でも、自分が思ったやり方で、
行動できることで
人のために何かをするんだ
そして稼いで、生きていくのだ
自分の思いのもと、行動すること
それが万人にとって正当と受け取られなくとも
自分がわかっていればいいのだ。
国民の平均月収が15,000円というの発展途上国
スリランカの古都、キャンディのおっちゃんから
受け取ったメッセージでした
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